11.5′-ヌクレオチド類による缶詰食品の風味改良-Ⅲ
缶詰殺菌における5′-ヌクレオチド類の安定性

5′-ヌクレオチド類を缶詰に応用するに当って、加熱殺菌に伴うそれらの安定性を調べた。5′-ヌクレオチド類は100℃では安定であるが、温度を上げると不安定になる。水溶液中で10℃の温度範囲での分解速度のQ10は5′-UMPで2.4〜2.6、5′-GMPで1.9〜3.5であった。なおpHが6.0から3.0に下がるに伴い、かつ加熱殺菌時間が長くなるに伴って分解しやすくなった。pH3.0、115℃40分の殺菌でリボタイドはなお70%が残存した。5′-ヌクレオチドの内では5′一CMP,5′-UMPは比較的に安定であった。缶詰への応用として可溶性でんぷんが共存するとリボタイドの分解が促進されるが、カゼイン分解物、食塩、グルタミン酸ソーダの存在は安定性には影響しなかった。缶詰内の5′-ヌクレオチド残存量はガラス・アンプル内の場合とほぼ等しく、また缶材および塗装の影響はほとんど認められなかった。したがって缶詰への応用も可能と考えられる。

著者
橋本 度、毛利 威徳、青山 延子
出典
東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,58-73(1965)