最近、有芽胞乳酸菌によるみかん缶詰の変敗が多く認められるようになった.そこで,この細菌によるみかん缶詰の変敗を防止させる目的で,この細菌の生物性状,耐熱性及び増殖に及ぼすpHや温度の影響などについて検討した.
この細菌による変敗には,膨脹する場合と膨脹しないで変敗する場合の2つの型があり,膨脹する場合は糖を分解して乳酸を産生すると同時にクエン酸を分解して酢酸と炭酸ガスを産生し,pHがやや上昇する.膨脹しない場合は糖の分解のみであるのでpHは低下する.
分離菌5株の至適温度は約30℃である.耐熱性については90℃におけるD値が0.6から12.0分で,みかん缶詰の殺菌条件では死滅させることは出来ない.従って,この細菌によるみかん缶詰の変敗を防止するには,シラップを100℃で加熱するか,紫外線殺菌して使用する必要がある.
- 著者
- 池上 義昭、橋本 京子、大田 智子
- 出典
- 東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,16,84-92(1985)