胞子の耐熱性は,その浮遊させた媒質の化学的及び物理的性質,胞子数,後培養の条件など多くの因子によって著しく影響される.
最近,或る脂肪酸やそのエステルが細菌の耐熱性に強く影響されることが報告された.そこで,缶詰より分離した細菌の芽胞の耐熱性におけるシュガーエステル(P1670)の影響を検討した.
このシュガーエステルは芽胞の加熱致死時間(LD50)に影響し,芽胞の耐熱性におけるD×値(致死時間を1/10に減少させるに必要なシュガーエステルの増加量ppm)の順序は芽胞に対する抗菌作用の強さと同じである.
耐熱性におけるシュガーエステルの影響は加熱中よりもむしろ,後培養で著しく影響される.すなわち,加熱による損傷胞子の発芽及び増加にシュガーエステルは影響する.
- 著者
- 池上 義昭、大田 智子
- 出典
- 東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,16,106-110(1985)