茶飲料缶詰の最適製造条件を知るため,缶詰製造と保存中の茶カフェイン,カテキン類の挙動を調べた.カフェインは極めて安定であったが,カテキン類はかなり不安定で,浸出液のpHが高いほど変化が大きかった.茶飲料中の天然型カテキンの安定化には少量のアスコルビン酸の添加が有効で,巻締め時の窒素ガスの噴射もある程度の効果があった.カテキン類の主な変化は異性化であり,茶モデル溶液中での加熱により,(-)-エピカテキンと(+)-カテキンはそれぞれ対応するエピマーに変化した.異性化の主因子は溶液のpHであり,pHが6.0かそれ以上では急速な異性化と液の褐変が進むが,pHが5.0以下では殆ど進行しなかった.茶の種類によってカテキン類の安定性は異なり,発酵茶(紅茶)中で最も安定で,半発酵茶(ウーロン茶中)で比較的安定であったが,非発酵茶(緑茶)中での安定性は小さかった.
- 著者
- 小松 美博、久延 義弘、末松 伸一、松田 良子、西郷 英昭、原 京子
- 出典
- 東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,19,89-98(1992)