好乾性真菌は低水分活性下でも生育し,貯蔵穀粒や塩干物,ジャムなど多くの食品を劣化させる.その防止には保存環境の監視と早期発見が重要であることから,DNA マイクロアレイを開発したが,対象種の一つAspergillus penicillioides に対して二種のプローブが必要であった.そこで,標品11株と野生株51株を用い,rDNA ITS1 & 2およびβ-チューブリン遺伝子の配列で種内の系統関係を解析した.
A. penicillioides は,基準株を含む群とそれに近い野生株の群,および,現在は異名とされつつも異論がある'A.vitricola'基準株を含み,かつA. penicillioides よりむしろA. restrictus に近い群に三分された.プローブは前二者と後者の菌株群に対応しており,「種以下」の系統関係を反映していた.開発したDNA マイクロアレイは種以下を迅速に検出,識別する高度な機能を有している.
- 著者
- 加瀬谷 泰介、青木 俊介、田辺 卓、竹治 仁詩、小梶 真美、一色 淳憲、吉田 充裕
- 出典
- 東洋食品研究所 研究報告書,29,1-7(2013)