植物工場の水耕栽培においては,栽培コストのほか,植物病原菌による病害発生などの課題がある.一方,植物生長促進根圏細菌(PGPR;Plant Growth Promoting Rhizobacteria)は,植物の生長や健康に良好な効果を示し,植物病原菌による病害を抑制するとともに栄養成分の利用と同化を促進する.そのため,水耕栽培におけるPGPRの利用はこれらの課題を解決できると推察された.
市販菌株から選定したいくつかのPGPR はミツバの生長を促進した.そこで,PGPR接種で栽培したミツバの食味,無機塩含量および香味を分析した.
味覚認識装置での食味測定において,PGPRを接種した水耕栽培ミツバの食味は土耕栽培のミツバに近い食味となったことから,PGPRは野菜の食味を変化させうる可能性が示唆された.無機塩含量についても,PGPR接種でMgおよびNaの含量が増加した.香味に関しては,ミツバの香味成分の一つと考えられたβ-myrcene の濃度が増加する傾向が見られ,香気成分の含量についても変化しうる可能性が示唆された.
- 著者
- 青木 俊介、遠田 昌人
- 出典
- 東洋食品研究所 研究報告書,30,69-77(2014)