芽胞耐熱性が高い耐熱性芽胞形成細菌であるMoorella thermoacetica,Geobacillus stearothermophilusは,缶詰食品や缶飲料の変敗菌としてしばしば問題となる細菌である.本研究では,294の缶詰食品や缶飲料について,同2菌種を同時検出するためのマルチプレックスPCR法を用いて,その分布状況を調査した.同時に実施した培養法においては,M. thermoaceticaが検出されたもののG. stearothermophilusは,いずれのサンプルからも検出されなかった.一方,マルチプレックスPCR法では,M. thermoacetica,G. stearothermophilusのいずれも検出された.また,好気培養,嫌気培養のいずれのサンプルからもBacillus subtilisが検出された.本マルチプレックスPCR法は,低レベルで存在する菌種の特異的検出を可能とし,缶詰・飲料などの原材料管理や製造工程における衛生管理において,培養法と共に有用であることが示唆された.
本論文はInternational Journal of Food Science and Technology [Volume 53, 6, 1352-1362, 2018] 掲載論文DOI:10.1111/ijfs.13691を転載したものである.
- 著者
- 中野 みよ
- 出典
- 東洋食品研究所 研究報告書, 33, 45-55 (2020)