容器詰食品の加熱殺菌工程における品温測定では,最遅速加熱点に温度センサーが配置されているが,温度センサー位置の検証には工数,方法の点で困難な場合がある.極稀に起こる品質問題や新製品開発の場面ではセンサー位置の確認が有用であるため、温度測定データから温度センサー位置を特定する方法について検討した.
ATS法の遅れ時間は,雰囲気温度の変化が測定点の品温に反映されるまでの時間とされている.伝導伝熱および対流伝熱の容器詰食品で,容器内中心軸上の様々な高さに配置された温度センサーの測定値から加熱側の遅れ時間:δhを算出した結果,δhが最遅速加熱点と強い相関があることが判った.最終的なF0値の最小値と最遅速加熱点のF0値は異なるがその差はわずかであり,δhにより温度センサー位置が特定できることが示唆された.
- 著者
- 稲葉 正一
- 出典
- 東洋食品研究所 研究報告書, 33, 79-84 (2020)