昨今,国民の高齢化に伴い,介護食品の需要が高まっており,今後も市場が拡大することが予想される.食品を軟化させる方法の1つに加熱処理があるが,加熱のみでは介護食品相当まで軟化しないものも存在する.そこで我々は,野菜の加熱軟化特性を調べ,その特性とデンプンの関係を調べた.
16種の野菜を121℃で33分間加熱し評価した結果,多くの野菜は介護食品に適した硬さ (2 × 104 N/m2) まで軟化したが,ゴボウ,レンコン,タケノコは一定の硬さを保持した.加熱で軟化し難いと考えられたこれら野菜について,さらに調査を進めた.
加熱処理後の野菜の硬さに関与する成分は,加熱軟化特性に影響すると考えられる.加熱軟化特性とデンプンの関係を調べるため,121℃で加熱処理した3種の根菜をデンプン分解酵素(SDE)で処理した結果,ゴボウ,ニンジンはSDE処理で軟化しなかったが,レンコンは約50%軟化した.SDE処理後のレンコンには50%程度のデンプンが残存すると予想された.ペクチン分解酵素処理でレンコンは20%の軟化にとどまったことも踏まえ,レンコンの加熱軟化性にはデンプンが関与すると考えられた.
- 著者
- 井上 竜一
- 出典
- 東洋食品研究所 研究報告書, 33, 89-94 (2020)