我々はこれまで黒麹菌(Aspergillus luchuensis)を用いた発酵が富有柿幼果の機能性を増強することを明らかにした.しかし,機能性増強に適した発酵温度の範囲については不明であった.そこで,25℃~40℃の範囲でβ-リパーゼ阻害活性の増強や風味,機能性成分の生成に及ぼす温度の影響を調べた.菌の生育では25℃にて生育の遅れがみられ,40℃では胞子を形成しなかった.β-リパーゼ阻害活性ではいずれの温度も同程度の増強がみられた.また,β-リパーゼ阻害活性を有する成分を見出し,活性成分A とした.活性成分Aは25℃および30℃ではほぼ生成せず,40℃で最も高い生成量を示した.風味では酸味および苦味雑味に相違がみられた.これらのことより,発酵温度の違いは機能性増強,機能性成分の生産,風味に影響を与えることがわかった.
- 著者
- 折居 千賀
- 出典
- 東洋食品研究所 研究報告書, 34, 79-83 (2022)