11.変敗原因菌Bacillus属菌及びPaenibacillus属菌検出のためのマルチプレックスリアルタイムPCR法の開発

食品の変敗原因菌は,原材料の選別から食品製造工程全体を通じて,様々な段階を通して混入する.それらの変敗原因菌の中でも,芽胞を形成するBacillus属菌やPaenibacillus属菌は,加熱殺菌処理後も生残し,冷蔵庫内においても保存中に生育することから,ミルク製品などの凝乳化や異臭を引き起こすことが知られており,これらの菌種は,食品業界において重要な変敗原因菌として位置づけられている.本研究では,これらの変敗原因菌の汚染状況を迅速に把握するために,B. subtilisグループを含む2グループの同時検出を可能とするマルチプレックスリアルタイムPCR法を確立した.Bacillus属菌の3グループおよびPaenibacillus属菌の検出では,約10コピーレベルまでの検出が可能であった.また,ポテトサラダとミルクを用いて行ったスパイク試験では,ポテトサラダにおいて,B. weihenstephanensisB. licheniformisで105-101 CFU/mLの検出が可能であり,B. weihenstephanensisでは,0.988のR2値を得た.一方,他の3菌種は,いずれも0.980以下であった.また,ミルクではいずれも105-102 CFU/mLの検出が可能であり,すべてのグループ別検出で,0.980以上のR2値を得た.さらに異なる温度下での保存試験において,ポテトサラダでは,いずれの菌種も7℃保存環境下での増殖は認められなかったものの,B. weihenstephanensisの増殖は顕著であった.一方,ミルクではB. weihenstephanensisは,すべての温度下での増殖が明らかであった.

Development of a multiplex real-time PCR assay for the identification and quntification of group-specific Bacillus spp. and the genus Paenibacillus
https://www.sciencedirect.com/journal/international-journal-of-food-microbiology
doi:10.1016/j.ijfoodmicro.2020.108573

著者
中野 みよ
出典
東洋食品研究所 研究報告書, 34, 85-96 (2022)/ International Journal of Food Microbiology, 323, 108573 (2020) を転載