前報のin vitroにおける薬剤の黒変防止効果の結果、EDTA、フィチン酸、ヘキサメタリソ酸ナトリウム、"カルゴン"等のキレート化が有効であることが判ったので、これらのキレート化剤を実際にアサリ水煮缶詰に使用した効果を報告する。
フィチン酸、カルゴン、EDTA、ヘキサメタリン酸ナトリウムをそれぞれ0.1%添加したものは、いずれも黒変の防止効果はなかったが、0.5%添加のものはいずれも完全に防止効果があった。
このことよりアサリ水煮缶詰の黒変はこれらキレート化剤を0.5%程度添加することにより防止出来ると考える。
EDTA 添加のものはいずれもやや赤褐色を呈する欠点がある。この赤褐色の原因は鉄以外のものと考える。
また黒変缶詰の硫化水素量は、0.636mg%含有しているのに対して正常缶詰は100〜200mg%であった。このことより缶詰の黒変は硫化水素量に大いに左右されるものと考える。
これらのキレート化剤を加えることにより蛋白質中のアミノ酸の持っているSH結合の分解をある程度防ぐものと考える。
- 著者
- 長田 博光、竹内 章子、岡屋 忠治
- 出典
- 東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,155-159(1965)