砂糖に最も近い甘味をもつ人工甘味料であるサイクラミン酸塩 を使用した果実缶詰や缶詰ジュース類に時々石油臭又はゴム臭とでもいうような異臭が発生することは、かなり以前より知られていたが、その発生原因については現在迄不明である。
我々はその異臭の発生原因が工場用水中に含まれる各種イオンの影響にあるのではないかと予想し、二、三の実験を行ない若干の知見を得たので報告する。
1)人甘(サイクラミン酸塩)使用缶詰に発生する異臭原因物質はシクロへキセンである。
2)サイクラミン酸塩と亜硝酸イオンがクエン酸、酸性下で共存するとシクロへキセンを生じ異臭が発生する。
3)缶詰中では硝酸イオンが存在すると還元されて亜硝酸イオンを生じ、これがサイクラミン酸と反応して異臭を生ずる。 人工甘味料としてサイクラミン酸塩を使用して缶詰を製造する場合には、亜硝酸イオンは勿論、硝酸イオン含量の多い水を用いると異臭発生の危険の多いことが認められた。
- 著者
- 澤山 善二郎、下田 吉夫、小野 正之、樋口 亮一
- 出典
- 東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,160-166(1965)