7.缶詰上部空隙内酸素ガスの変化-Ⅲ
第一スズ塩の内面二重塗装缶に詰めた缶詰ナツミカン(Citrusnatsudaidai,Hayata)果汁の暗色化、ならびに缶の上部空隙内酸素ガスの消去と缶の真空度に

ナツミカン果汁(pH2.9、滴定酸度、クエン酸として2.3%;糖度20.5%)を内面二重塗装缶に詰め、塩化節一スズ(Snとして100ppm)を添加して缶詰とし、内面二重塗装缶に不可避的ともみられる貯蔵中における果汁の暗色化に対する塩化第一スズの抑制効果、上部空隙内の酸素ガスの消失傾向、真空度の変化、缶の腐食傾向などについて観察した。

塩化第一スズの果汁の暗色化抑制効果が顕著で、スズ箔のそれに比較して優越している。少量の塩化第一スズ(Snとして100ppm)の存在下において、極、少量の硝酸塩(NO3-Nとして10ppm)の添加は酸素ガスの消費を鈍らせることが観察された。少量の硝酸塩単独添加では殆んど酸素ガスの存在割合の減少に影響しないし、また塩化第一スズの少量単独添加によっても殆んど影響が観察されなかった。

真空度は30℃100日近い貯蔵後の測定結果では、塩化第一スズを添加した内面二重塗装缶は最高で、無地缶は最低、他の内面二重塗装缶はそれらの中間に位置した。残存酸素ガス割合の低下の速さは真空度の最低位の無地缶において最大で、真空度の最高位の塩化第一スズ添加内面二重塗装缶において最小、真空度の中間に位置する他の内面二重塗装缶では、残存酸素ガス割合の低下の速度も中間に位置した。

著者
木村 圭一、児島 宏枝、衣裴 寿子、志賀 岩雄
出典
東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,46-55(1969)

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