数年来、温州蜜柑を主とするオレンジジュース缶詰が大量に生産されているが、蜜柑シラップ漬缶詰に比較して、その商品としての歴史も浅く技術的に研究するべき分野が多く存在している。
そこで、我々は缶詰という特殊性即ち貯蔵性という点に主観点を置き1年に亘る貯蔵を目標として溶出錫量の変化を検討した。
1)缶詰中の溶出錫量の簡易測定法を私案した。
2)オレンジジュース缶詰中の溶出錫量につき検討を加え以下の点を明らかにした。
3)ジュース充填時の温度は、高温処理を行なえば、溶出錫量は少なくなる。
4)ジュース中にビタミンCを強化すれば溶出錫量は少なくなる。
5)缶詰の上部空隙量が少ない方が溶出錫量は少なくなる。
6)缶詰ジュース製造工場により溶出錫量に差異がある。
7)オレンジジュース缶詰中の溶出錫量は貯蔵月数の経過と共に漸増する。
8)電気メッキブリキと熔融錫メッキブリキにおいて溶出錫量値に差異がない。
9)オレンジジュース缶詰においてはその蓋底(内面)のみに防蝕塗装を施すことは好ましくない。
- 著者
- 小田 久三、岩本 喜伴
- 出典
- 東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,53-65(1959)