シイタケ、シメジなどきのこ類には5′-グアニル酸(5′-GMP)が見出されるが、これは旨味の強い呈味成分である。きのこ類の液内培養は菌糸体を食用、飼料用に利用する目的で開発されているが、この菌糸体や培養液に5′-GMPなどヌクレオチド類が蓄積されるか否かは興味深いことである。
本報では食用きのことえのきたけの菌糸体を液内振盪培養したときの5′-ヌクレオチドなど核酸成分の変化を調べた。
窒素源として酒石酸アンモンあるいは尿素が使用されたが、前者ではpHが3.0迄低下し、後者ではpHは7.0付近を上下した。
はじめ培地成分として加えられた無機燐酸塩の大部分が菌糸体内に取り込まれ、菌糸体内の総燐の15%以上がRNA一燐で占められた。菌糸休の生育が止った後にそのRNAが分解され、ヌクレオチドが培地内に分泌された。全燐に対するRNAの比率は菌糸体の生育相に相関していた。菌糸体及び培地内の主要なヌクレオチドはAMPとUMPであった。
- 著者
- 橋田 度、毛利 威徳、志賀 岩雄、寺本 四郎
- 出典
- 東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,210-220(1969)