液体類飲料の缶詰中の溶存鉄量を灰化あるいは酸分解処理を行わずに直接、原子吸光分析法で測定する場合の共存物質が鉄の検出値に対する干渉を調査して、次の結論を得た。
即ち、分折線2483Aを用い、FuelとしてC2H2をOxidizerとしてAirを使用し、燃焼バーナーにThree-Slot boling burnerを採用することにより、試料中の鉄の直接測定は可能であり、一般の飲料程度の成分含量の共存物質は、測定値に殆ど影響を与えない。
但し、その成分含量が特に多い場合は検出度が低下する。特に試料を原子吸光分光機の炎中に導入噴霧系に於いて粘度、粒度を変化せしめる場合は、検出感度も変化する為、注意する必要があり、この場合は、Standard addition methodを実施して、共存物質の干渉を補償しなければならない。
なお、試料中にアルコールが含まれている場合は、標準鉄水溶液のアリコートを、試料中のアルコール含量に合せた水溶液で検量線を作成すれば良い。
いづれにしても液体類飲料中の鉄の測定は、原子吸光分析法を実施することにより、試料を灰化、酸分解等の前処理をすることなく直接測定が可能である。
- 著者
- 小田 久三、小林 みどり
- 出典
- 東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,240-249(1969)