液体類飲料の缶詰中のアルミニウムの含有量を灰化あるいは酸分解処理を行わずに直接、原子吸光分析機を用いて測定する場合の共存物質がアルミニウムの検出値に対する影響を調査し、次の結論を得た。分析線3093Aを用いFuelとしてC2H2をOxidizerとしてNO2を使用することにより、試料中のアルミニウムの直接測定は可能であり、次に示した飲料中に含まれている物質は、測定に殆ど影響を与えない。
1) りん酸 2)クエン酸 3)酒石酸 4)マレイン酸
5)アスコルビン酸 6)蔗糖 7)蔗糖脂肪酸エステル
8)スズイオン 9)鉄イオン
但し、その成分含量が特に多い場合(濃縮物等)は検出度が低下する。特に試料を原子吸光分析機の炎中に導入噴霧系において粘度、粒度を変化せしめる場合は、検出感度も変化する為、注意する必要があり、この場合は,Standard addition method を実施して共存物質の干渉を補償すれば良い。なお、試料中にアルコールが含まれている場合は、標準アルミニウム水溶液のアリコートを試料中のアルコール含量に合せた水溶液で検量線を作成すれば良い。 いづれにしても液体類飲料中のアルミニウムの測定は、原子吸光分析法を実施することにより試料を、灰化、酸分解等の前処理を省略して直接測定が可能である。
- 著者
- 小田 久三、小林 みどり
- 出典
- 東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書,250-258(1969)